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参考資料

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『入江フィンガーテスト(FT)って何ですか?』

高橋敏氏に聞く『入江フィンガーテスト(FT)って何ですか?』
      医道の日本 第648号(平成10年7月号)1998年  ビギナーズ・ガイド

 鍼灸治療法にはさまざまな流派があります。経絡治療、奇経治療、中医学、etc・・・。
今回は第9回目として「入江フィンガーテストって何ですか?」を高橋敏氏に教えていただきます。

 入江フィンガーテスト(FT)とは、昭和57年に入江 正先生が考案したもので、O-リングテストと同じ効果があり、また、これを使えば脈診を短時間で習得できるというたいへん便利なものです。

 入江先生は九州大学数学科卒業後一時教壇に立ち、その後薬局を経営し、鍼灸学校を卒業して故・間中喜雄先生に師事したというユニークな経歴を持っており、入江FTの創出にも先生の学問が生かされています。

 さて、O-リングテストを御存知の方はわかると思いますが、入江FTは、O-リングと同様に、身体が示す微小反応を感知検出する方法です。ただ、やり方が少し違います。

 まず、検者は利き手をセンサーとし、これで、調べるべきものに触れます。そしてもう一方の手をテスターとし、これは図1のように示指を母指に重ねて指をすべらすように手を動かします。
テスターの動き

さて、健康な被検者に来てもらい、検者はセンサーを被検者の掌に置き、テスターを動かして、指をすべらせます。このときはスムーズにすべるはずです。ところが、被検者が別の手に冷たい缶ジュースなど(身体に悪いもの)を持つと、テスターの指は粘り着き、引っかかる感じ(ステッキー)になります(図2)。
センサーとテスター                 
              

つまり、指の動きのスムーズはO-リングテストのクローズ(指が開かない状態〉にあたり、ステッキーはオープン(指が開いた状態)にあたるのです。

 ここまでだと、ひとりでできるO-リングテストといった感じですが、入江FTはこれを使って脈診ができ、さらに、その診断に対する治療法までシステム化されているところが大きな特徴です。以下にそれを簡単に紹介します。

入江式経別脈診部1
入江式経別脈診部2

 入江FTを使って行う脈診部は図3のようで、対応する臓腑・経脈も決まっています。検者はセンサーを患者の脈診部に置き、テスターを動かします。12ヵ所(奇経脈診部を合わせれば13ヵ所)を順番に診てゆき、テスターがステッキーになったら、そこが異常ある部位だと判断します。

 ABライン上に異常があればそれは臓病で、胃潰瘍、慢性肝炎などや臓腑に伴う腰痛・肩凝りがあります。これには経別治療を行います。CDライン上の異常は経脈病といい、花粉症や、風邪、腰痛など病がまだ臓腑に及んでいない病気です。これには経脈治療を行います。また、奇経脈診部(図3※)でステッキーになれば、奇経治療です(八総穴の選択は奇経腹診部で行います)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

                 

 
 経別・経脈治療は、異常脈診部によって使う経穴(2ヵ所または4ヵ所)が決まっており、それをIP(イオンパンピング)でつなぐものです。奇経治療もIPを使います。

経絡の種類
 それから、筋肉・筋膜に関連した病気は経筋の病です(図4)。寒と熱によるものがありますが、入江FTでは冷房病など冷えによるものを対象とします。これもFTを使って診断でき、焼鍼で経筋穴をたたいていくという治療法(経筋治療)を取ります。

                 

 診断・治療法の詳しくは成書を読んでいただければわかりますが、経別・経脈・経筋・奇経治療と非常に整理されたものです。そして、治療の効果はまたFTで判断します(スムーズになればOK)。

 さて、入江FTは、これまでお話してきた診断・治療法としてだけでなく普段の生活でも役立てることができます。FTを習得すれば、薬なとが自分の体に合うか判断できて便利です。

 身体の微小反応を感知する能力は誰にでも備わっているものですから、誰でも訓練すればFTができるようになります。ただ、1回や2回では無理ですから、それを考慮して入江FT塾(臨床東洋医学講座)は10回で1コースとしています。

次に症例を紹介します。



症例

〈症例1 腸閉塞 60歳 男性〉

〔主訴〕腹痛

〔現病歴〕

 5年前、胆石にて胆嚢摘出術を行なった既往がある。

 前日から急に上腹部痛が出現。排便・排ガスなく、夕方赤十字病院を受診したところ腸閉塞の診断にて浣腸と点滴を行い、少しガスが出て楽になった。しかし本日午後より再び腹部全体の痛みが強くなり、嘔気・嘔吐があって腹が張って苦しいとの訴えで当医院に来院した。

〔診断と治療〕

 腹部全体に圧痛があり、腹膜刺激症状は軽度認めた。腸雑音は亢進し腹部単純X-Pでニボーがあり、癒着による腸閉塞と診断した。知り合いの患者であったので、了解してもらい鍼治療を行うことにした。

 手掌・経別診断部にFTを行い奇経の証と診断した。奇経腹診部より督脈-陽キョウ脈、任脈-陰キョウ脈の証で、経脈診で左右を区別し、左申脈-左後谿、左照海-左列缺に置鍼しIPでつないだ。

 15分間治療したが症状に変化なく、手掌・経別診断部でもう一度FTを行うと手背のセンサーでステッキー(st)であったので、焼鍼による経脈治療を追加した。

 陽キョウ脈・陰キョウ脈・督脈に補の焼鍼、脾経には隠白から三陰交まで補の焼鍼、胃経には足三里まで潟の焼鍼、大腸経に補の焼鍼を合谷まで行ったところで、患者は急に「腹が痛い、便が出る」と言ってトイレに駆け込んでしまった。30分後に戻り「ガスと便が出て腹が楽になりました」と信じられないようであった。

 翌日、来院したときは腹痛もなくガスも出て症状は消失しており、腹部単純X-Pでもニボーはみられなかったが、手掌・経別診断部では三焦の腑がstであったので五合の薬から大建中湯を選び手に乗せFTで適・不適診を行うと三焦の腑のstがスムーズ(sm)になったので、大建中湯を3日分処方した。その後3ヵ月経つが再発していない。

〔考察〕

 奇経に対する考え方には諸説があるが、その中には正経十二経脈を調節する作用もあると考えられる。奇経治療を行うと十二経脈だけでなく十二経別も整う。

 この症例では、もともと三焦の異常があり、病邪によって脾経・胃経・大腸経にまで及びさらには奇経に至ったと考えられる。三焦の症候には腹部脹満、少腹硬満があるが、はじめから三焦の治療をしても短時間で治すことはできなかったであろう。奇経・経別・経脈など病証を的確に診断し糸をほぐすように順序よく治療すれば、この症例のように著効することが多い。入江FT治療システムはそれを導いてくれるものである。


〈症例2 腰痛① 48歳 男性〉

〔主訴〕腰痛

〔現病歴〕

 3年前に他医院で腰椎椎間板ヘルニアの診断を受け、その後年に2~3回くらい腰痛が出現し、その都度牽引や局所注射を受けて症状を軽減させていた、今回、1週間前より腰痛が出現し、腰を曲げたり伸ばしたりするときに増強し、靴下を履くのにも痛いという。知人の勧めもあって当医院に来院した。

〔診断と治療〕

ラセーグなどの根症状もはっきりせずヘルニアの再発ではなさそうである。FTによる診断では、右手掌診断部の上焦と下焦でstであり、経別脈診部のC2(図3参照)で最もstでありC2に円筒磁石を置いて確認し、脾の経脈病が考えられた。さらにスバイラルの図を左手に乗せてFTを行うと右手掌部上焦のstが強くなった。風邪を引いていないかと聞いたところ、4、5日前より風邪気味だという、風邪を契機として起こった脾の経脈病の腰痛と診断した。

診断できれば、治療はFTシステムに従って行えばよい。経脈診では右の脾経がstであったので、本治法として右の脾の経脈治療を行った。右公孫・左偏歴に置鍼しIPでむすび、左衝場・右太淵に置鍼しIPでむすんだ。標治法として督脈・岸膀胱経・帯脈に補潟を決め焼鍼を行った。治療後「腰の痛みは取れたがまだ重い感じがする」というので、手掌・経別脈診部をFT診断して、右の大腸経に補潟を決め商陽から合谷まで焼鍼を行ったところ腰の重い感じも消失し1回の治療で完治した。


〈症例3 腰痛2 72歳 女性〉

〔主訴〕腰痛、左大腿部痛と左下肢のしびれ

〔現病歴〕

 1年前から骨粗しょう症、変形性股関節症にて某病院整形外科に通院しているが、徐々に腰痛、左大腿部から股関節にかけての痛みが強くなり、半年前から左下肢のしびれも出現してきた。「薬だけもらっているがよくならない。他の接骨院で電気治療やマッサージを受けたが同じなので診てほしい」と来院した。

〔診断と治療〕

 内服している薬を見せてもらうと降圧剤・冠拡張剤・健胃薬など計9種類で薬を手に乗せ適・不適診をFTで行なうと最もstであったのは、ロキソニン・テルネリン・メチコバールで愁訴に関連した薬であった。

 FT診断では、督脈-陽キョウ脈、帯脈-陽維脈の証で本治法として左申脈-左後谿、右外関-右足臨泣に置鍼しIPでむすぶ奇経治療を行い、標治法として督脈・帯脈・陽キョウ脈の焼鍼と、左右の関元兪の補瀉を決めた皮内鍼をつけ1回目の治療を終了した。最もstであった3種類の薬を内服しないように指示したところ、不安そうに「止めたら痛みが強くならないでしょうか」というので、説明して納得してもらった。

 1回目の治療直後には症状に変化がなかったが、2回目の1週間後に来院したときには杖もつかず歩行できるようになっていた。FT診断では経別脈診部のa2でstであり、手掌診断部では上焦と下焦でstであった。上焦のstは頭頚部の異常を意味するので、聞いてみると「頭痛持ちでときどき頭が痛くなる」という。FTで調べると顎関節あたりが最もstだったので、脾の経別と顎関節症と診断した。治療は本治法として左承泣と左太白に置鍼しIPでむすび(脾の経別の治療)、左右の聴宮の少し前に置鍼しIPでむすんだ(入江式顎関節治療)。標治法として最もstである腰兪に補の皮内鍼をつけた。治療後、足から大腿部にかけて楽になったという。

 3回目の2週間後に来院したときには、しびれも取れたが畑仕事をすると痛くなるという。その後2ヵ月に1回くらい少し痛くなると来院し治療している。


〈症例4 腰痛③ 26歳 女性〉

〔主訴〕腰から足にかけてひきつるような痛み

〔現病歴〕

 もともと冷え症で冷房にあたると足がだるくなることがあった。2、3日前より腰が重く、今日朝起きたら腰が痛く右足までひきつるような痛みが出現したので、夫に付き添われて来院した。

〔診断と治療〕

 診察室では車椅子からベッドに容易に移れないのでそのままで診察した。FT診断では手掌部の下焦でst、手背のセンサーでよりstであり、「ボゥ」の音素診でさらにstになったので、寒に傷られた経筋病と診断した。

 経筋診断部から胃・胆・脾・肝経筋と診断し治療を行った。経筋治療では補瀉の診断は必要ないので、ステンレス製の焼鍼を熱して足先から膝の上まで経筋穴に当てて行った。その後、暖かくして休ませ30分後に立たせたところ、「腰は伸びないが痛みは楽になりました」と言って帰って行った。翌日来院したときには一人で歩けるようになり、痛みは取れたが腰が重いという。そこで督脈と陽キョウ脈の経筋治療で腰の重いのも取り略治とした。

〔考察〕

 腰痛・肩凝り・膝痛などの運動器疾患にはさまざまな病因がある。今回は腰痛の3例を提示したが、腰痛でも経脈だけが病んでいるものか、臓腑に伴うものか、寒によるものかなどを診断し、さらにどの臓腑の異常なのか、どの経脈の異常なのかも診断することが重要である。診断が的確であれば、治療効果も高いはずである。腰痛①は風邪が契機となった腰痛であり、腰痛②は臓腑に関連したものである。さらにこの例では、症状を改善する薬が体質に合わないために症状を長引かせたと考えられた。このような例は数多く、また胃潰瘍の薬が腰痛を悪化させていた例もあった。腰痛③は冷えによる腰痛である。経筋治療は入江先生が霊枢から現代に復活させた治療法であり、寒によってそり返って筋が痙攣したものを対象とする。

 入江FTでは診断と治療がシステム化されており、本治法として経別・経脈・経筋・奇経治療があり、標治法として焼鍼・皮内鍼・円皮鍼などの治療がある。中でも焼鍼による治療は他には類をみない手技であり、ぜひ試していただきたい。

                     * * *



最後に、入江FTを深く勉強したい方のために、参考図書や研究会等を高橋氏に紹介していただきました。

参考図書

★入江正著『臨床東洋医学原論』 9,600円

★入江正著『漢方治療原論』 18,000円

★入江正著『経別・経筋・奇経療法』医道の日本社・3,800円

★間中喜雄著『医家のための鍼術入門講座』医道の日本社(絶版)

※『臨床東洋医学原論』と『漢方治療原論』の購入は東京入江FT塾でしか扱っておりません。購入希望の先生はお問い合せページから承ります。

研究会等

★東京入江FT塾

毎年4月から翌年3月まで講習会を行っています。

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